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母子日赤だより

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妊娠中のサプリメントの利用について

薬剤部より

妊娠中の食生活はなにかと気を使うものですね。妊娠を機に健康食品やサプリメントを新しく飲み始める人も多いのではないでしょうか。しかし実際は食事以外での摂取が求められているのは葉酸のみとされており(葉酸について[栄養課より])、その他は基本的に食事で摂取することが推奨されています。
サプリメントの中には成分が高濃度で添加されているものもあるため、毎日服用することで過剰摂取などのリスクがあります。また、持病をお持ちの方は常用薬との飲み合わせが悪いことも。葉酸以外の栄養はできるだけ食事から摂るように心がけ、食事からの摂取が難しい場合には、医師、薬剤師、栄養士などの医療従事者に相談しましょう。

サプリメントを利用する際の注意点

妊娠期における主なビタミン・ミネラルなどの摂取基準は表1のようになっています。サプリメントを利用する際は摂取量が適切か確認しましょう。ここからはサプリメントを利用する際、摂りすぎに注意が必要な成分について解説していきます。
葉酸ビタミンAビタミンB1ビタミンB2ビタミンCビタミンDビタミンEカルシウムn-3系
脂肪酸
推奨量推奨量推奨量推奨量推奨量目安量
目安量推奨量推奨量目安量
女性
18-29歳240㎍
(+400㎍)※1
650㎍RAE1.1mg1.2mg100mg8.5㎍5.0mg650mg10.5mg
※2
1.6g
30-49歳700㎍RAE5.5mg
妊婦初期~13週+400㎍+0.2mg
+0.3mg+10mg+1.5mg+2.5mg
中期14週~27週+240㎍+9.5mg
後期28週~+80㎍RAE

※1 妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、組成手妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のため、普段の食事以外に葉酸を400㎍/日追加摂取することが望まれます。
※2 月経なしの場合の一日当たりの推奨量:6.5mg

ビタミンA

目の正常な機能の維持、細胞の正常な維持、からだの成長などに関与します。体内に吸収される際はビタミンAもしくはプロビタミンA (ビタミンAになる前の段階にある物質)であるβ-カロテンとして吸収され、β-カロテンは小腸でビタミンAに変換されます。
ビタミンAは脂溶性ビタミンの1つであるため体内に蓄積しやすく、サプリメントによる過剰摂取には注意が必要です。ビタミンAは過剰摂取することで胎児の形態的な異常が増加すると報告されており、耐容上限量は2,700㎍RAE/日とされています。これから妊娠を考えている方、妊娠3ヶ月以内の方はレバーなどビタミンA含有量の多い食品、サプリメント等の継続的な大量摂取は避けましょう。
ただし、植物由来のプロビタミンAであるβ-カロテンは、ビタミンAが体内で不足したときのみビタミンAに変換されるため、過剰摂取による健康被害は報告されていません。野菜をしっかり摂り、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。

ビタミンD

骨の成分であるカルシウムとリン酸の吸収を促進します。体内に吸収される際はビタミンDもしくはプロビタミンD (ビタミンDになる前の段階にある物質)として吸収され、プロビタミンDは皮膚での紫外線の照射を経てビタミンDになります。
ビタミンDも脂溶性ビタミンの1つであり、体内に蓄積しやすいため、サプリメントによる過剰摂取に注意しましょう。ビタミンDを過剰摂取した場合、血液中のカルシウム濃度が高くなりすぎたり、臓器にカルシウムが蓄積してしまうことがあります。
なお、プロビタミンDは紫外線を浴びた際に皮膚でビタミンDへと活性化されますが、その量は調節されており必要以上のビタミン D は産生されません。バランスのとれた食事をとり、適度に日光を浴びることが大切です。

カルシウム

体内に最も多く含まれているミネラルであり、体重の1~2%を占めています。そのうち99%は歯と骨に存在し、残りの1%は筋肉の収縮などに関与しています。
妊娠期にはカルシウムの吸収率が上がることから、基本的にカルシウムの付加量は必要ないとされています。
しかし、これは目安量のカルシウムを摂取している場合です。平成30年国民健康・栄養調査によると、日本人の平均的なカルシウム摂取量は少なく、20代女性で384mg/日、30代女性で441mg/日となっています。この年代の女性のカルシウム摂取推奨量は650mgですから、妊娠にかかわらず日頃から意識的にカルシウムを摂取することが必要だとわかります。
 ただし、カルシウムの耐容上限量は2,500mg/日となっており、過剰摂取によって血液中のカルシウム濃度が高くなりすぎたり、他のミネラルの吸収が抑制されてしまうことが知られています。サプリメントを利用する際には取りすぎに注意しましょう。

体内に含まれる微量ミネラルのうちのひとつで、酸素の運搬や酵素のはたらきに関与しています。鉄が不足すると鉄欠乏性貧血となりますが、妊娠中は胎児へ鉄が供給されるため鉄欠乏性貧血になりやすく、妊婦検診では検査結果に応じて内服治療が行われています。
一方で、鉄欠乏性貧血でない人がサプリメントなどで鉄を過剰に摂取すると、過剰症のリスクがあります。体内には一度に大量の鉄が吸収されることを防ぐシステムがあるものの、一度吸収された鉄はほとんど排泄されません。貯蔵しきれなくなった鉄は全身の組織に蓄積する可能性があるため、貧血の治療が必要ない人は鉄の摂取量が40 mg/日を超えないようにしましょう。
また、甲状腺の疾患をお持ちの方は常用薬との飲み合わせが悪い場合があるため、鉄のサプリメントを始める前に医師や薬剤師に確認しましょう。

n-3系脂肪酸(DHA・EPAなど)

体内で合成できず外から摂取することが必要な必須脂肪酸のうちの一つで、不足すると皮膚炎などを発症します。n-3系脂肪酸はα-リノレン酸、EPA及びDHAに大別されますが、このうちDHA は神経組織の構成成分であり、胎児のこれらの組織をつくるため、妊娠中はn-3系脂肪酸の摂取が必要とされています。胎児の発育に問題のない値は1.48 g/日と言われていますが、18〜49歳女性の平均摂取量はこれを上回っており、多くの女性は必要量を日々摂取できていることがわかります。
なお、n-3系脂肪酸は3 g/日を超える用量を摂取した場合、血を固めるシステムが弱まり出血のリスクを増大することがあると言われているため、取りすぎには注意が必要です。

最後に

妊娠は自分の身体のことだけでなく、お腹の中の赤ちゃんの栄養についても考えるきっかけになるのではないでしょうか。これを普段の食事を見直すチャンスと捉え、バランスの良い食事について考えてみましょう。厚生労働省が妊産婦のための食事バランスガイドを公表しているため、ぜひ参考にしてください。また、サプリメントはあくまで補助的なものと考え、利用する際には過剰症に注意し医療従事者に相談しながら正しく利用しましょう。

薬剤部 早矢仕