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母子日赤だより

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妊娠中、授乳中の服薬について心配なことはありませんか?

 日常生活において、かぜや腹痛などの急性疾患に罹り服薬したり、糖尿病や腎疾患、アレルギー疾患、てんかん等の慢性疾患を患い、その治療を行うため、薬を服薬される方がいらっしゃいます。特に妊娠中や授乳中の薬の使用は、赤ちゃんへの影響を考えて心配される方も多いと思います。しかしながら、妊娠中や授乳中であっても自己判断で服薬を中止するのではなく、症状や病気に対して治療を行うため、必要なお薬を適切に使用することが望まれます。今回は、市販薬や医療用医薬品として多く使用されている解熱鎮痛剤の妊娠中、授乳中の使用における注意点をお話しします。

熱さまし、痛み止めの妊娠中・授乳中の使い方

~妊娠期~

 使用される解熱鎮痛薬の種類は多くありますが、妊娠中の服薬で安全とされている解熱鎮痛薬は、『アセトアミノフェン』です。妊娠初期の使用による赤ちゃんの形態的異常への影響は認められていません。いくつかの報告では、妊娠中の服薬によりお腹の赤ちゃんの心臓血管への影響や、胎児期や乳幼児の曝露により小児期の喘息の発症率が増えるとの報告がされています。しかし否定する報告もあり、小児期の喘息のリスクについては、他の原因も指摘されており、確定していません。鎮痛効果については、他の薬と比べるとマイルドですが、妊娠や胎児へのリスク増加は現在のところ認められていないため、安心して服薬することができます。それでもお腹の赤ちゃんにとっては、不必要な薬であるため、必要最小限での服薬が望まれます。
 アセトアミノフェン以外でよく使用される解熱鎮痛剤として、『非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDs)』(イブ®A錠:イブプロフェン、ロキソニン®S:ロキソプロフェン等)があげられます。これらの薬の妊娠中の服薬については、赤ちゃんや妊娠への影響が認められているため、使用を避けましょう。特に妊娠中期から後期における服薬により、胎児期に本来開いている心臓の血管を閉じてしまい、心不全や胎児浮腫などの赤ちゃんへの影響が認められています。また赤ちゃんの腎臓へ働き、羊水の素である尿の排出を抑え、羊水が少なくなるなど胎児環境が悪くなることが分かっています。また、飲み薬だけでなく貼り薬などの外用薬も同様の報告がされています。特に強い効果をもたらす『非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDs)』外用薬の妊娠中の使用は、避けましょう。他方で『サリチル酸メチル』を主成分とした貼り薬(サロンパス®、MS冷シップ、MS温シップ等)は、妊娠中の使用により、胎児への明らかな悪影響は認められていないことから、腰痛などの際には、使用可能なお薬です。

~授乳期~

 通常、お母さんが服薬した解熱鎮痛剤が乳汁中に移行する量はごくわずかであり、赤ちゃんが母乳を介して摂取する薬物量は、薬の効果をもたらす量は移行しないされています。『アセトアミノフェン』や『非ステロイド性解熱鎮痛剤(NSAIDs)』は、乳児の治療量と比べても極めて少なく、母乳中の薬物を摂取した赤ちゃんに有害な影響は起こらなかったとの報告がされています。そのため、これらの解熱鎮痛剤(飲み薬、外用薬含む)を使用中であっても授乳をやめる必要はありません。
 但し、『アスピリン』を大量服薬している母親の母乳を摂取した赤ちゃんに、出血傾向が見られたとの報告がされているので、注意しましょう。

 妊娠中や授乳中の解熱鎮痛剤の使用は、赤ちゃんや妊娠への影響も考慮し、安全な薬を選択しましょう。市販薬は成分が様々あり、使用の際は妊娠中、授乳中の服用についての注意書きをしっかり確認しましょう。特に妊娠中は、できるだけお薬は、控える方が安心ですが、痛みによりストレスになることもあるため、不安な場合は、医師や薬剤師に相談し、症状にあった安全性の高いお薬を選ぶようにしましょう。

薬剤部 小林