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母子日赤だより

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妊娠初期の血液型検査について

妊娠初期の採血検査には「血液型」と「不規則抗体」の検査が含まれます。
ここでは、これらの検査を「輸血」と関連付けてご紹介していきます。


*一つ前の記事「小児科外来で血液型検査を実施しています」もぜひ併せてご覧下さい。

1. 血液型と輸血の関係

 血液型は、人が出血した際に他人の血液で補うという行為(輸血)の中で発見されてきました。輸血が始まった当初は個々の血液に「違い」があるという概念がなく、やみくもに輸血が行われて重篤な副作用を起こすことが多くありました。研究が進む中で、この副作用には赤血球の構造の違い(血液型)が関与していることが見いだされ、患者さんの血液型に合わせた血液を輸血することで副作用を抑えられることが分かってきました。さらにはこの副作用に免疫という機能が大きく関係していることも分かっています。

2. 不規則抗体とは

 私たちが持つ免疫の機能の一つに、抗原と呼ばれる物質に対して抗体と呼ばれる物質を作り出す機能があります。例えば予防接種ではワクチン(抗原)を接種することで抗体が作られます。作られた抗体は、ワクチンと同じ抗原を持つ細菌やウイルスが体内に侵入した際に、それらを排除するように働きます。

 赤血球が持つ抗原に対しても抗体が作られることがあり、抗A抗Bという規則抗体と呼ばれる抗体と、それ以外の不規則抗体に分けられます。不規則抗体の多くは、輸血や妊娠・出産により自分以外の血液が体内に入ることで作られます。不規則抗体は自分に対しては無害ですが、輸血された他人の赤血球に結合して破壊することがあるため、輸血の際は抗体が結合しない血液が必要になる場合があります。

3. 出産までの「2つの輸血」に備える

 妊婦さんに対する血液型と不規則抗体の検査は主に2つの目的のために行われます。

 1つ目の目的は、出産時の出血への備えです。出産は出血を伴うため、時として母体の生命を危険にさらします。事前に検査をすることで、輸血に適切な血液をあらかじめ把握しておくことができます。

 もう1つの目的は、母体と胎児の間での「輸血」(母児間出血)への備えです。妊娠中には胎児の血液が母体に流れ込むことがあり、特に妊娠28週目以降にその確率が増します。胎児の赤血球は母体から見れば異物であるため、不規則抗体が作られることがあります。作られた抗体は胎児に貧血などの症状を起こすことがありますが(多くは2回目以降の妊娠で起こります)、不規則抗体の存在を検査であらかじめ確認しておくことでその後の対策を練ることができます。

4. 血液型がRh(-)の妊婦さん

 Rh(-)の妊婦さんがRh(+)の胎児を妊娠した場合、胎児から流れこんだRh(+)の血液により抗Dという抗体が作られることがあります。この抗体は胎児に貧血などの症状を引き起こす場合があるため、抗Dが作られるのを防ぐために、適切な時期に抗D免疫グロブリンという物質を注射します。
 また、Rh(-)の妊婦さんに輸血を行う場合は、抗Dが作られるのを防ぐために、原則としてRh(-)の血液を輸血します。

5. 不規則抗体を持つ妊婦さん

 妊婦さんが持つ不規則抗体が胎児に貧血などの症状を起こす可能性がある抗体の場合は、その抗体の強さ(抗体価と呼びます)を定期的に検査します。もし抗体価が上昇してきた場合は、胎児が貧血などを起こす確率が上がるため、定期的に胎児の状態をチェックします。

検査技術課 伊豆田