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ホーム  > 院長ブログ  > 祝辞 平成23年度卒業し助産師になるあなたへ

祝辞 平成23年度卒業し助産師になるあなたへ

ご卒業おめでとうございます。
昨年3月の未曾有の災害となった東日本大震災から1年、余震も多く電力不足の中、日常生活も落ち着かず心も不安定のまま厳しい勉学と実習の日々の1年であったかと拝察しております。そのような尋常ではない環境の中を乗り越えて皆様が今日この卒業の日を迎えられましたこと本当にうれしく存じます。ご自身のご努力は言うまでもないことですが、ここに至るまでの道のりを温かくあふれる愛情で指導し支えてこられました先生方、ご父兄の皆様に取りましても大きな喜びの日を迎えられたことと拝察申し上げます。誠におめでとうございます。

国力を測る物差しには様々なものがあります。たとえば国民総生産とかブータン国王夫妻来日で注目を浴びた国民総幸福度などです。そして母子保健の妊産婦死亡率、乳幼児死亡率もその国の衛生水準、教育水準、経済水準を示す上で重要な指標です。あなたのこれからの仕事は一人一人の妊婦さんに寄り添って満足できる分娩を導き健康な赤ちゃんを迎え入れるだけではなく、その結果が世界における日本の母子保健の大切な評価に結びつく大きな仕事であることを覚えていてください。

昨年12月に私は日本赤十字社が行っております東アフリカにあるウガンダの保健医療支援事業を視察する機会を得ました。日本赤十字社はウガンダ赤十字社と協力してとりわけ内戦の激しかったウガンダ北部地域の母子保健の支援と地元の研修医育成の支援を2010年から3か年計画で行っております。この母子保健支援事業に当院から助産師を派遣いたしておりました。ウガンダの妊産婦死亡率は日本の80倍以上です。貧しく女性の地位も低く医療施設が近隣にないため妊娠しても健診を受けることもできず、出産も身内や医療知識を持たない伝統的産婆が取り上げることが多いため感染を起こし多くの妊産婦が命を落としています。日本赤十字社はウガンダ赤十字社に協力して地元ボランティアに母性保護の重要性と安全な出産の知識を授け妊産婦のよきアドバイザーとして活躍してもらうための人材育成の事業を行っています。視察ではこのボランティアの方々とのミーティングの他に、妊産婦さんを家庭訪問しました。三匹のこぶたの住むようなわらと土の家に母親とジョナサンという名前の生後3ヵ月の男の子がいました。この女性は夫からHIVを感染させられていました。ウガンダは6割がキリスト教ですが、伝統的に一夫多妻でHIVも広がりやすい背景があります。HIVは母乳は禁忌ですが、清潔な水や哺乳瓶も用意できず、ミルクを買う余裕もなければ母乳で育てざるを得ません。私たちの前でこのHIV感染患者である母親が赤ちゃんに母乳を含ませる様子を見ても私にはその行為を止めさせることも母親にかける言葉もありませんでした。

医療の現場では教科書通りには行かない様々な矛盾があります。そのような中で母と子にとって何が最善なのかを判断していくことが求められていきます。たくさん経験を積んでいただき広い視野で物事を考え判断できるようになって下さい。またぜひ日本だけに留まらず地球規模で母子保健の向上のためにお仕事をして下さることをお願い致します。

あなたにとってこの1年または2年は助産師になることが大きな目標だったと思います。今、ここからは5年後、10年後の自分がどのようであるか、どのようでありたいかぜひ目標をたててください。「じんざい」という言葉があります。あなたは頭のなかでこの「じんざい」を漢字変換していると思いますが、どのような漢字に変換しているでしょうか?人に存在の在で「人在」。これは単にそこに人が存在しているだけで毒にも薬にもならない状態です。卒業して職場で4月からしばらくの間のあなたはこの状態でしょう。次は材料の材の「人材」です。これは言われたことは確実に行い指導者に恵まれると能力を発揮します。職場に慣れて来ると近い将来にはこの人材になることができるでしょう。しかし私があなたになってもらいたいのは財産の財と書く「人財」です。知恵と直感力の両方が活用でき、何があっても決して逃げない責任感を持っている、そして自分の能力が発揮できるような環境をつくり、あわせて周りの人もよい方向へ導くのがこの財産の財と書く人財です。5年後、10年後にこの人財となりあなたが職場の宝と言われるように努力を重ねていただくことを期待しております。

あなたのこれからのご活躍と健康をお祈りして私からのお祝いの言葉とさせていただきます。
ご卒業誠におめでとうございました。