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院長ブログ
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お薦めの1冊「千住家にストラディヴァリウスが来た日」

本の虫と呼ばれるくらいの本好きは世にたくさんいますが、日本赤十字社の大塚義治副社長もそのお一人です。道路を歩きながらでも本を読んでいるその様子を見た御近所の方が心配されて奥様に「危ないですよ」と注意されたというエピソードがあるほどです。副社長はある雑誌にペンネームで一冊の文庫本を紹介するエッセイを連載中です。私は次に読む本を迷った時によく参考にさせていただいています。「千住家にストラディヴァリウスが来た日」もその1冊です。著者は日本画家の長男・博、作曲家の次男・明、バイオリニストの長女・真理子のお母様・千住文子氏です。本の内容は真理子がバイオリンの名器中の名器ストラディヴァリウスと出会い、その桁違いの値段のストラディヴァリウスを購入するまでを芯に千住家の教育方針とそれによって育まれた3人兄妹の才能と努力、そしてゆるぎない親子愛と強い絆の兄妹愛が描かれています。

本の第一章には千住家の家族の有り様と子供たちの教育方針が記されています。「子供は、親の持ち物ではないんだ。子供は、自分の人生を、自分で探さなければいけない。それを親が決めたり望んだりするのは、親のエゴイズムだよ。」と文子は夫に言われそれが現実となることを知ります。長男博は突然のように大学で日本画を学びたいと言います。夫は「決して弱音を吐かず何年でも頑張れるか。受験するなら一番ハードルの高い大学1校だけ。10年かかってもいい。30歳になって自分に実力のないことがわかったら、その時進路を変えよ。人生はロングレース。30歳なら、やり直せる。」文子は博が「一番ハードルの高い大学」に合格するとは思えず夫に「かわいそう。少しは手を引いて」と言います。すると夫は「僕たちが死んだら誰に助けてもらう。そのほうがよっぽどかわいそうじゃないのか。一人でしっかり歩けるようにしておかなくては。”高いハードル”と言ったのはそのためだ。ハードルは自分にあるんだ。まず、それを越せる人間にならなくては、何をやってもダメなんだ。」と応えます。文子はこの時父親の愛なるものを理解するのです。この父親のとてつもなく大きな愛に答え博は3浪の後に芸大に合格し、その兄を見ていた弟の明は大好きな音楽の道に進むことを決意し慶応大の工学部を辞め「人生の目的は作曲家になること」と宣言します。父親は家族全員を集めて「明の目的ができた。今日からガンバレ」とビールで乾杯し「10年かかってもいい。」と言い、明は3年頑張り芸大の作曲科に合格します。

天才少女としてプロデビューしたバイオリニストの真理子は大人のプロ社会の困難さや醜さに直面する日々で、千住家はこの状況の中で鍛えられ耐えていくのです。
芸術のそれぞれの分野の第一人者として活躍中の3人の兄妹ですが、決して順調に進んできたわけではないことがこの章を読むとよくわかります。

2000年に夫は亡くなりますが、子供たちはその父親の偉大さを文子に語り始めたそのような時にストラディヴァリウスが千住家にやって来ることになります。第2章からはやがてその名器が千住家の一員となるまでの嵐のような数ヵ月間の家族ドラマが描かれています。

小児科医をしていると、躾やこどもとの関わり方について親御さんから質問受けることがしばしばですが、実のところ自信を持って答えられることなどありません。私自身確固たる方針や信念を持って子育てしてきたとは言い難く、この本を読んで家族とはこうありたいと深く感じました。こうありたいと思い努力することで我が家も「千住」とはいかなくても「百住」くらいになれるのではと思っています。